採用担当が聞き飽きたフレーズの対処法①

新卒就職活動

面接でよく聞く「使いやすいけれど危険なフレーズ」①

年間で数百人単位の面接をしていると、どうしても聞き飽きてしまうフレーズが出てきます。

学生さんにとっては「言いやすい」「無難」「長所にも聞こえる」という、非常に使い勝手のよいフレーズなのだと思います。

しかし、使い方を間違えると、本人が想像している以上に危険です。

今回は、そんなフレーズと、その対処法を紹介していきます。

いくつか思い当たるものがあるので、シリーズ化できるかもしれません(笑)

記念すべき第1回はこちらです。

「私の短所は、一つのことに集中しすぎて、少し周りが見えなくなることです。」

出ました。

面接界のロングセラー商品です。

私の体感では、22卒の面接で35%くらいの学生さんが使っていたような気がします。

一日に何人も面接していると、

「私の短所は、一つのことに集中しすぎて……」

くらいの段階で、

(来た。周りが見えなくなるやつだ)

と、心の中で続きを先回りしてしまうこともあります。

もちろん、この短所自体が悪いわけではありません。

実務でも、それくらい集中して仕事に取り組める人は、高いパフォーマンスを発揮する可能性があります。

ただし、このフレーズには、いくつかの落とし穴があります。

あくまで私の独断と偏見ですが、採用担当者の目線から解説していきます。


危険な理由①

「周りが見えなくなること」が致命傷になる仕事がある

仕事は、一人で黙々と進めれば終わるものばかりではありません。

特に、多くの人と関わる仕事や、チーム単位で進める仕事では、「周りが見えなくなる」こと自体が大きなリスクになります。

例えば、仕事中には次のようなことが頻繁に起こります。

  • 自分の仕事を中断して、急ぎの依頼に対応する
  • 他の人の進み具合に合わせて作業順序を変える
  • 困っているメンバーをフォローする
  • 全体の納期を守るため、自分の担当範囲を調整する
  • 上司や関係部署へ、途中経過を報告する

自分だけがどんどん先に進んでも、チーム全体が進んでいなければ仕事は完成しません。

駅伝でいえば、自分だけ別のコースを全力疾走しているようなものです。

本人は一生懸命です。

走るスピードも速い。

しかし、残念ながらタスキはつながりません。

そのため、チームワークや安全確認、周囲との調整が重要な職種で、

「集中すると周りがまったく見えなくなります」

と言ってしまうと、面接官は少し不安になります。

(報告を忘れないだろうか)

(急な変更に対応できるだろうか)

(自分の仕事だけに没頭しないだろうか)

(安全確認まで見えなくなったら困るな……)

特に、建設、製造、医療、介護、接客、施工管理など、周囲との連携や安全確認が重要な仕事では、かなり慎重に受け止められる可能性があります。

一方で、個人の裁量が大きく、成果が比較的自己完結しやすい営業職や研究職、クリエイティブ職などでは、集中力の高さをプラスに評価してもらえる場合もあります。

つまり、このフレーズは万能ではありません。

短所は、自分だけで決めるものではなく、志望する企業や職種との相性まで考えて選ぶ必要があります。


危険な理由②

「好きなことしかしない人では?」と思われる

この短所を話す学生さんの多くは、次に具体的なエピソードを説明してくれます。

よく登場するのは、部活動、サークル、学園祭、趣味、ゲーム、旅行などです。

例えば、

「学園祭の準備に夢中になり、気づいたら夜遅くまで作業をしていました」

「好きなスポーツの練習に集中しすぎて、周囲の声が聞こえなくなることがあります」

本人としては、

「私はこれほど集中力があります」

というアピールのつもりです。

しかし、面接官の頭には別の可能性も浮かびます。

(それ、単に楽しかっただけでは?)

少し意地悪な見方をすれば、

「好きなことを始めると、周りが見えなくなる人」

とも受け取れてしまいます。

当然ですが、仕事は好きなことだけではありません。

気の進まない仕事もあります。

地味な作業もあります。

同じ確認を何度も繰り返す日もあります。

苦手な相手と調整しなければならないこともあります。

会社が本当に知りたいのは、

「好きなことに夢中になれるか」ではなく、「必要なことに責任を持って取り組めるか」

です。

楽しいことに集中できるのは、ある意味では普通です。

好きなゲームなら、気づけば5時間経っていることもあります。

しかし、それをもって、

「私には驚異的な集中力があります」

と言われても、面接官は判断に困ります。

それは集中力なのか。

それとも、ただゲームが好きなのか。

この境界線は意外と重要です。


危険な理由③

本当に短所だと思っていないことが伝わってしまう

このフレーズが多用される最大の理由は、短所の形をした長所として使いやすいからでしょう。

「集中しすぎる」という言葉には、

  • 真面目
  • 熱心
  • 責任感がある
  • 最後までやり抜く
  • 高い集中力がある

といった、よい印象が含まれています。

だからこそ、多くの学生さんが安心して使います。

ただし、面接官もその構造を知っています。

そのため、

「短所は集中しすぎることです。でも、これは長所でもあると思っています」

だけで終わると、

(短所を聞いたのだけれど……)

となってしまいます。

面接官が短所を質問する目的は、欠点を探して減点することだけではありません。

主に確認したいのは、次の3点です。

  • 自分を客観的に見られているか
  • 自分の課題を認識しているか
  • 課題に対して改善行動を取っているか

したがって、短所を無理やり長所に変換することよりも、

短所によって実際に何が起き、現在はどう対処しているのか

を話す方が、はるかに説得力があります。


面接官はこうやって深掘りする

このフレーズを聞いたとき、面接官は次のような質問をする可能性があります。

「周りが見えなくなって、実際に誰かへ迷惑をかけたことはありますか?」

「集中している途中で、別の仕事を頼まれたらどうしますか?」

「チームメンバーから注意されたことはありますか?」

「今はどのように改善していますか?」

「自分の集中と、チーム全体の進捗のどちらを優先しますか?」

ここで具体的な答えが出てこないと、

「面接用に用意した短所なのだろうな」

と見抜かれてしまいます。

面接官は、短所の種類そのものよりも、その短所と本人がどのように向き合っているかを見ています。


では、どんなエピソードを添えればよいのか

このフレーズを使うのであれば、添えるエピソードが非常に重要です。

おすすめなのは、次のような流れです。

最初はあまり乗り気ではなかった

必要なことだと考えて取り組んだ

工夫を重ねるうちに夢中になった

集中しすぎて周囲への確認が不足した

その経験から対策を始めた

この流れであれば、

「好きなことだけに夢中になる人」ではなく、「やりたくないことにも努力して夢中になれる人」

という印象を与えられます。

例えば、次のような回答です。

私の短所は、一つの作業に集中すると、周囲への確認が遅くなることです。大学のゼミで、当初はあまり得意ではなかったデータ整理を担当しました。工夫しながら進めるうちに作業へ集中しすぎてしまい、メンバーへの途中報告が遅れたことがあります。それ以降は、作業開始前に確認時間を決め、一定時間ごとに進捗を共有するようにしています。

この回答であれば、

  • 苦手なことにも取り組める
  • 実際の失敗を認識している
  • 他人のせいにしていない
  • 改善策を実行している

という点が伝わります。

単に「集中力があります」と言うよりも、ずっと信頼できます。


「周りが見えなくなる」は少し強すぎる

もう一つの対処法は、表現そのものを調整することです。

「周りが見えなくなる」という言葉は、かなり強烈です。

本当に何も見えなくなる人を想像すると、会社としては少し怖くなります。

そこで、実態に合わせて次のように言い換える方法があります。

「一つの作業に集中すると、途中報告が遅くなることがあります」

「目の前の仕事を優先しすぎて、全体の進捗確認が遅れることがあります」

「自分で解決しようとするあまり、相談が遅くなることがあります」

「細部にこだわりすぎて、時間をかけすぎることがあります」

この方が、具体的な課題が伝わります。

短所を必要以上に大きく見せる必要はありません。

面接は、短所の告白大会でも、不幸自慢大会でもありません。

自分の課題を冷静に理解し、仕事をするうえでどう管理しているかを伝える場です。


改善策は「気をつけています」で終わらせない

学生さんの回答で、もう一つよく聞くのが、

「今後は周りを見るように気をつけたいと思います」

という対策です。

気持ちは分かります。

ただ、「気をつける」は対策として少し弱いです。

人間は、気をつけていても忘れます。

集中すると周りが見えなくなる人が、集中している最中に「周りを見なければ」と思い出せるなら、そもそもそれほど困っていないかもしれません。

改善策は、できるだけ行動に落とし込みましょう。

例えば、

  • 30分ごとに作業を止めて全体を確認する
  • 作業前に優先順位を整理する
  • 中間報告の時間をあらかじめ決める
  • 一人で悩む時間に上限を設ける
  • チームメンバーへ定期的に進捗を共有する
  • タスクを一覧にして、緊急度を確認する

といった方法です。

「気をつけています」よりも、

「作業開始前に優先順位を書き出し、1時間ごとに進捗を確認しています」

の方が、実際に改善へ取り組んでいることが伝わります。


短所は「印象をよくするための質問」ではない

短所を質問されると、多くの学生さんが、

「どうすればマイナス評価を避けられるか」

と考えます。

しかし、本当に大切なのは、短所を隠すことではありません。

会社が知りたいのは、

その人の弱点が、仕事上どのように表れそうなのか。
そして、本人がその弱点をコントロールできそうなのか。

ということです。

完璧な人を探しているわけではありません。

そもそも、完璧な人はなかなかいません。

仮にいたとしても、おそらく面接には来ません。

短所があること自体は問題ではありません。

自分の短所を正しく理解していないことや、改善する意思がないことの方が、企業にとっては大きな不安材料になります。


まとめ

「一つのことに集中しすぎて、周りが見えなくなる」という短所は、使いやすい一方で、伝え方を間違えると危険です。

ポイントは次の3つです。

  • 短所は、企業や職種との相性を考えて選ぶ
  • 「好きなことに夢中になっただけ」と思われないエピソードを選ぶ
  • 実際に行っている具体的な改善策まで伝える

短所を無理やり長所に見せる必要はありません。

大切なのは、

「私はこのような傾向があります。しかし、仕事に悪影響が出ないように、このような対策をしています」

と説明できることです。

面接官を感心させるような美しい短所よりも、本人の経験に基づいた、少し不格好でも具体的な短所の方が信頼できます。

そして、このフレーズを使うこと自体が悪いわけではありません。

ただし、年間で数百人を面接している採用担当者には、かなりの確率で聞き慣れた言葉です。

使うのであれば、フレーズそのものではなく、あなたにしか話せない具体的な経験で勝負してください。

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