面接でついた嘘は、採用担当者にバレるのか?
今回は、少し危ないテーマについて書いてみようと思います。
採用活動をしていると、
「こんな嘘をつかれても、採用担当者には意外と分からないだろうなぁ」
と思うことがあります。
もちろん、採用担当者も何でも見抜けるわけではありません。
鋭い質問をすれば瞳孔が開き、鼻の下に汗をかき、急に目が泳ぎ始める――。
そんな分かりやすい人ばかりなら苦労しません。
実際には、落ち着いて話されたら確認しようがないこともたくさんあります。
では、面接でついた嘘はどこまでバレるのか。
採用担当者の立場から、独断と偏見を交えながら考えてみます。
大前提:採用を大きく左右する嘘はつかない
まず、大前提です。
採用の可否を大きく左右するような嘘は、つかない方がよいです。
例えば、次のようなものです。
- 学歴や卒業見込み
- 保有資格
- 応募条件になっている語学力
- 過去の勤務先や職歴
- 就業するために必要な免許
- 健康状態や犯罪歴など、会社から適法に確認された重要事項
こうした情報は、入社手続きや証明書の提出によって確認される可能性があります。
仮に採用されたとしても、後から虚偽が分かれば、本人と会社の双方にとって非常に面倒なことになります。
応募条件に「TOEIC700点以上」と書かれている会社で、実際は450点なのに「730点です」と答える。
これは「少し話を盛った」というより、応募資格そのものを偽ったことになります。
さすがに攻めすぎです。
面接は一発逆転を狙うギャンブルではありません。
入社後も続く人間関係の入口です。
入口で大きな嘘をついてしまうと、その後もずっと嘘を守り続けなければなりません。
TOEICの点数は確認されるのか
例えば、TOEICの点数。
「TOEIC700点以上必須」といった応募条件がある会社では、証明書の提出を求められる可能性があります。
一方、語学力を特に必要としていない会社で、
「学生時代はTOEICの勉強を頑張り、700点を取得しました」
とガクチカの一部として話した場合、証明書まで提出させる会社は多くないと思います。
つまり、採用担当者側からすると、確認しようと思えば確認できるけれど、通常はそこまでしない情報です。
では、点数を適当に高く言ってもよいのか。
もちろん、おすすめはしません。
なぜなら、面接官が英語に詳しければ、次のような質問が来る可能性があるからです。
「最初は何点だったのですか?」
「どのパートが苦手でしたか?」
「どんな勉強をして点数を伸ばしましたか?」
「今も英語の勉強を続けていますか?」
「英語で簡単に自己紹介してもらえますか?」
最後の質問が来たら、なかなかの地獄です。
点数そのものよりも、そこへ至るまでの過程を話せるかどうかで、経験の実在感が見えてきます。
「〇〇大会優勝」は確認されるのか
「学生時代に〇〇大会で優勝しました」
これも、普通の面接でいきなり、
「では賞状を提出してください」
と言われることは、ほとんどないでしょう。
大会名を検索して、歴代優勝者一覧まで確認する採用担当者も多くないと思います。
しかし、大会での成績を話せば、当然その後の質問が来ます。
「どのくらいの規模の大会でしたか?」
「何チームが参加していましたか?」
「あなたはどんな役割でしたか?」
「一番苦労した場面は何ですか?」
「決勝戦ではどのような展開になりましたか?」
ここで回答が妙に抽象的だったり、話すたびに内容が変わったりすると、違和感が生まれます。
採用担当者は必ずしも「嘘だ」と断定するわけではありません。
ただ、
「この話は、どこまで本人の経験なのだろう?」
という疑問が残ります。
面接では、嘘だと完全に見破られなくても、なんとなく信用できないと思われた時点で不利になります。
裁判ではないので、面接官が虚偽を立証する必要はありません。
「少し違和感がある」というだけで、より信頼できそうな別の学生を選ぶことができます。
ここが面接の怖いところです。
留学経験は確認されるのか
留学経験も、大学の成績証明書や留学先の修了証まで確認されるとは限りません。
特に、短期留学や語学研修の場合は、採用担当者がその場で事実確認することは難しいでしょう。
ただ、留学経験はエピソードが具体的になりやすい分、経験していない人が話すと意外なところで不自然さが出ます。
例えば、
- 現地で最初に困ったこと
- 授業の進め方
- 滞在先での生活
- 休日の過ごし方
- 日本との文化的な違い
- 現地で仲良くなった人
- 帰国後に変わった考え方
こうした質問は、特別に相手を疑っていなくても自然に出てきます。
「友人から聞いた話を自分の経験として話せば大丈夫」と思うかもしれません。
しかし、借り物のエピソードは、出来事を説明できても、そのとき自分が何を感じ、どう判断したのかという部分が弱くなります。
経験者が話す内容には、どうでもよさそうな細部があります。
泊まった部屋が思ったより狭かった。
スーパーで買い物の仕方が分からなかった。
授業中の発言量に驚いた。
日本食が恋しくなると思ったのに、意外と平気だった。
こうした細部が、話に実在感を与えます。
嘘を成立させるには、そのような細部まで作り続けなければなりません。
面接のために架空の人生を一本書き上げるくらいなら、本当に経験した小さな出来事を丁寧に掘り下げる方が、はるかに楽です。
アルバイト歴は確認されるのか
「まだ3か月しか働いていないと、エピソードとして弱い気がする」
そう考えて、
「3年間続けています」
と言いたくなる学生さんもいるかもしれません。
アルバイト先に電話をして在籍期間を確認する会社は、通常それほど多くないでしょう。
その意味では、表面的には確認されにくい情報です。
ただし、3年間働いたと話せば、面接官は「3年間分の経験がある人」として質問します。
「新人の教育は担当しましたか?」
「繁忙期はいつですか?」
「3年間で仕事のやり方はどう変わりましたか?」
「店長が変わったときに何か変化はありましたか?」
「コロナ禍ではどのような営業体制でしたか?」
社会で大きな出来事があった期間については、そのときの状況を聞かれることもあります。
嘘は、一つついたら終わりではありません。
一つの嘘を守るために、周囲へ新しい嘘を増築する必要があります。
最初は平屋だったはずなのに、深掘り質問をされるたびに2階、3階と増築され、最後には建築基準法が心配になるほど巨大な建物になります。
そして、どこかで柱の位置が合わなくなります。
それなら、
「アルバイトを始めてまだ3か月ですが、短期間でも早く仕事を覚えるため、毎回メモを取り、勤務後に整理しています」
と正直に話す方がよいと思います。
3か月しか働いていないことは、必ずしも弱点ではありません。
3か月の中で何を考え、どう行動したかを具体的に話せれば、十分に評価材料になります。
ガクチカを創作してもバレないのか
結論から言えば、完成度の高い創作であれば、面接中に見破れない可能性はあります。
採用担当者は探偵ではありません。
学生生活のすべてを調査できるわけでもありません。
ただし、
「バレなければ問題ない」
とは言い切れません。
創作したエピソードには、大きく3つの問題があります。
1.深掘りされるたびに矛盾しやすい
面接官は、同じ内容を少しずつ角度を変えて質問します。
- なぜ始めたのか
- 誰と取り組んだのか
- どんな反対意見があったのか
- 失敗したとき、誰に相談したのか
- もう一度やるなら何を変えるか
最初に準備した模範回答だけでは対応できません。
2.本人の感情や判断が薄くなる
架空の話は、出来事の説明が中心になりがちです。
しかし、面接官が知りたいのは、華々しい出来事よりも、
「その場で本人がどう考え、なぜその行動を選んだのか」
です。
ここが弱いと、きれいな話なのに人物像が見えてきません。
3.入社後の期待と本人の実力がずれる
例えば、実際には人をまとめた経験がないのに、
「50人のメンバーを率いてイベントを成功させました」
と話して採用されたとします。
会社は、その人を「周囲を巻き込める人」として評価するかもしれません。
入社後には、当然その能力を期待されます。
嘘によって採用されても、本人に合わない役割を任されれば、苦しくなるのは本人です。
採用面接は、会社が学生を選ぶ場であると同時に、学生が自分に合う会社を探す場でもあります。
嘘をついて会社に合わせすぎると、入社後のミスマッチを自分で作ってしまいます。
「嘘」と「話を盛る」の境界線
人間がいつも100%正確に、何の演出もなく話しているかといえば、そんなことはありません。
面接では誰でも、自分がよく見えるエピソードを選びます。
分かりやすく順序を並べ替えたり、重要でない部分を省略したりもします。
それ自体は、私は問題ないと思っています。
ただし、伝え方を工夫することと、事実を作ることは別です。
例えば、
「サークルの代表として50人をまとめました」
と言いながら、実際は50人が所属するサークルの連絡係だったのであれば、かなり危険です。
一方で、
「50人が所属するサークルで連絡係を担当し、回答率を上げるために連絡方法を改善しました」
であれば、事実を魅力的に伝えています。
成果を大きく見せるために、人数、期間、役職、点数、順位などの客観的事実を変えるのは「編集」ではありません。
一方、事実は変えずに、
- どこに問題意識を持ったか
- 自分なりに何を工夫したか
- 小さくてもどんな変化があったか
- 失敗から何を学んだか
を丁寧に伝えるのは、立派なプレゼンテーションです。
採用担当者は「すごい経験」だけを求めていない
学生さんが嘘をつきたくなる背景には、
「自分には話せるほど立派な経験がない」
という不安があるのだと思います。
全国大会で優勝していない。
海外留学もしていない。
サークルの代表でもない。
アルバイトで売上を200%にしたわけでもない。
それでも、まったく問題ありません。
採用担当者が知りたいのは、必ずしも経験の大きさではありません。
同じ出来事が起きたときに、その人がどう考え、どう行動するのかを知りたいのです。
例えば、
- 遅刻が多かったので、前日に準備する習慣をつけた
- アルバイトで注文ミスをして、確認方法を変えた
- 苦手な授業から逃げず、友人に教えてもらった
- グループ課題で意見が合わず、全員の考えを整理した
- 部活動でレギュラーになれなかったが、練習を続けた
一見すると地味です。
しかし、本人が本当に経験した話であれば、深掘りするほどその人らしさが出てきます。
架空の全国大会優勝よりも、本当に経験したアルバイト初日の失敗の方が、人物像をよく表すこともあります。
嘘を描き切れる能力は、頭の良さなのか
以前の私は、
「嘘のエピソードを最後まで矛盾なく描き切れるなら、それはそれで頭の良さが表れるのではないか」
と思うこともありました。
実際、相手の質問を予測し、一貫した物語を作り、その場で受け答えするには、一定の構成力や対応力が必要です。
ただ、その能力があるなら、嘘を作る方向ではなく、自分の本当の経験を面白く伝える方向へ使った方がよいと思います。
平凡な経験から意味を見つける。
失敗を隠さず、そこからの変化を言葉にする。
相手に伝わるように順序を整理する。
こちらの方が、会社に入った後も使える能力です。
嘘を矛盾なく維持する能力は、面接が終わればほとんど役に立ちません。
場合によっては、入社後も嘘の続きを演じることになります。
かなり燃費の悪い能力です。
まとめ
面接でついた嘘が、すべて採用担当者に見破られるわけではありません。
証明書を提出しない情報や、本人しか知らない経験については、確認できないこともあります。
ただし、問題は「完全にバレるかどうか」だけではありません。
- 深掘り質問で違和感が生まれる
- 話の一貫性が崩れる
- 信用できない印象を持たれる
- 入社後に実力とのずれが生じる
- 嘘を守るために、さらに嘘が必要になる
こうしたリスクがあります。
話を多少魅力的に見せることまで否定する必要はないと思います。
面接は自分を伝える場ですから、表現を工夫することは必要です。
ただし、変えるのは事実ではなく、伝え方です。
事実を大きくするのではなく、事実の中から面白い部分を見つける。
これが一番安全で、強いガクチカだと思います。
採用担当者は、スーパーマンを探しているわけではありません。
全国大会で優勝していなくても、海外留学をしていなくても大丈夫です。
むしろ、何でもない経験を自分の言葉で具体的に話せる人の方が、よほど印象に残ります。
嘘は推奨しません。
というより、採用担当者としては推奨できません(笑)
しかし、「自分の経験なんて大したことがない」と思って架空の実績を作るくらいなら、まずは本当に経験したことを掘り下げてみてください。
あなたが大したことではないと思っている経験の中に、採用担当者が知りたい「あなたらしさ」が隠れているかもしれません。

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